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ドイツW杯観戦日誌・目次
 
マルタとの強化試合に意義はあった(6/5)
開幕は静かに迫っている(6/6)
入場券は本当にないのか?(6/7)
ストライカーの決め手は判断力(6/8)
ワールドカップ開幕(6/9)
日本の敗因を考える(6/12)
フランスは復活するか(6/13)
「東欧の速攻」は滅びたのか?(6/14)
監督の用兵が勝負を決める(6/15)
米国が見せた9人での戦い方(6/17)
「決定力不足」を考える(6/18)
ドイツのサッカーの底力(6/20)
日本の敗退を考える(6/22)
ドイツは燃え上がる (6/24)
イングランドの放り込み(6/25)
カメラマンの戦い (6/26)
アフリカのサッカーを考える (6/27)
準決勝・ドルトムント (7/4)
準決勝・ミュンヘン (7/5)
決勝・ベルリン (7/9)
 

※このコンテンツは、ドイツ・ワールドカップ期間中に、同名のブログに掲載していた記事に加筆、転載したものです。

 

 


 牛木素吉郎のドイツ・ワールドカップ観戦日誌
  1970年メキシコ大会から10大会連続現地取材をしている
  スポーツジャーナリスト・牛木素吉郎のリポートです。(協力:ビバ!サッカー研究会)

6月13日(火)
フランスは復活するか

フランス 0対0 スイス (シュツットガルト)

★8年前のスタイル、8歳の老化
 シュツットガルトへG組のフランス対スイスを見に行った。この試合の見どころは「フランスが優勝候補として復活するかどうか」である。
 フランスが優勝したのは8年前だった。次の2002年はジダンが開幕前にケガをして、さんざんだった。その後、ジダンをはじめ、ベテランの主力選手は、いったん代表チームから退いた。しかし、今大会の欧州予選で、フランスが敗退しそうになったのでジダンが復帰し、その力でドイツに姿を現すことができた。この一連のできごとは、ジダンの存在が、いかに大きいかを示している。
 フランスの戦いぶりのスタイルは、ジダン中心の8年前に戻っている。しかし、栄光の顔ぶれはそれぞれ8歳の年齢を加えている。ジダンは33歳。フランス大会に20歳で登場したアンリも28歳。第1戦のスイスとの試合に出た先発メンバーの平均年齢は29.8歳だった。
 
★ジダンはトップ下の王様
 攻撃はすべてジダンから始まっている。コーナーキックもフリーキックもスローインも、すべて自分でやる。「トップ下の王様」といいう感じで、ボールを集めて攻めを組み立てる。1回転して相手のマークをはずす個人技も見せる。遠くの味方を、あらかじめ見ていてサイドチェンジの長いパスを的確に出す。前線のアンリを走らせる。
 ジダンにボールが渡ろうとすると、アンリがすばやく走り出る。そのタイミングが絶妙である。ジダン中心の「栄光のフランス」はちゃんと生き残っている。ただし、100パーセントではない。部分的に良さを出すだけである。
 午後6時からの試合だが、シュツットガルトの競技場には、強烈な西日がまともに降り注いでフライパンの上のようだった。そのために、フランスのベテランたちは「全力プレー」ではなかった。後半のなかばごろから、ようやくフィールドの半分くらいが、半透明のスタンドの屋根の陰に覆われた。
 ジダンは、日陰の部分でプレーすることに専念しているようだった。
 
★ベスト16の試合がカギ
 相手のスイスは出場選手の平均年齢26.2歳。19歳のジュールーも交代して出た。フランスの最年少は23歳のリベリー。王様ジダンの左隣に位置して、王様に代わって走り回る役だった。ベテラン対若さの対戦。若い方は暑さの中でも挑戦者の意気込みで一生懸命走る。隣国でお互いに手の内は知り尽くしている。結果は0対0の引き分けだった。
 フランスにとって、引き分けは必ずしも悪くない。残る相手は韓国とトーゴ。この日の試合振りから見ても、フランスが調子をとりもどしてくれば、それほど難しい相手ではないだろう。問題は部分的にしか昔の面影を披露しなかったベテランが、100パーセントに戻っていくかどうかである。
 優勝を狙うチームは、第1戦から、ずべてをさらけ出すようなことはしないものである。この日のフランスの「手抜き」は、優勝を狙うためのスロースタートだったのかもしれない。あるいは、暑さのためだったかもしれない。そうであればいいが、老化のためだったのであれば楽観はできない。
 競合が出揃うベスト16の試合が、カギになるだろうと思った。

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