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読者にかわって対談
夏休みに全日本の試合を! (2/2)
(サッカーマガジン1969年4月号)


目標をどこにおくか

―― 話は変りますが、ことしはメキシコの銅メダルを踏み台に、次の目標への第一歩を踏み出す年だと思うんです。ところが、日本のサッカーの次の目標が、来年のワールドカップなのか、次のミュンヘン・オリンピックなのか、明確にされていないのではないでしょうか。

竹腰 日本代表チームの強化目標ということですね。ただひとつだけ、いえということであれば、3年後のミュンヘン・オリンピックであると申しあげたい。しかし、だからといって、ことし一挙に代表選手を若手ばかりに切替えて、これから3年間鍛えていくつもりかというと、それは違う。そのときの最強メンバーを編成して鍛えながら、ミュンヘンヘ持っていく。その途中にあるワールドカップにも、その時点での最強の編成でぶつかる。9月にソウルでワールドカップの予選があって、これに勝ったら次にイスラエルの組との試合がある。それに勝って、はじめて来年6月、メキシコのワールドカップに行ける。ワールドカップの本番は、プロの出る大会で、ここで勝つのはオリンピックより、はるかに困難だけれども、最善をつくしてがんばる、という気持です。

―― ミュンヘンが当面の最高目標であるということになれば、ことしはワールドカップの予選はありますけれども、昨年のメキシコ・オリンピック、一昨年のメキシコ大会アジア予選のように、せっぱつまったもの、どんな無理でもしなければならないものではないわけですね。最近では珍しく余裕の持てる年だともいえますね。

竹腰 うーむ、まあ、そういっても、いいでしょう。

―― いままでサッカーマガジンの誌上にも、いろいろな意見がのったわけです。たとえばここ数年、マレーシアのムルデカ大会にBチーム、つまり2軍を送って、向こうの感情を害したりしている。日本はアジアをもっとたいせつにすべきだし、またムルデカで一度ぐらい優勝してみろ、ということもある。ことしこそ、余裕があるのだから、こういう懸案を解決したらどうでしょうか。

竹腰 ムルデカ大会はことしは1軍を送ります。これは義理を果たすということばかりではないが、日本のサッカーがこれまでになったのは、十数年来、マレーシアのラーマン首相をはじめとするアジアの国の協カのおかげで、これに報いるのは当然だし、またアジアとともに伸びていかなければ、日本のサッカーも行き詰りがくるだろうと思います。いろいろな意味でムルデカ大会には、銅メダルをとった日本の代表チームを参加させることにしました。


底辺拡大のために

―― いいですねえ。それにもうひとつ加えさせてもらえば、これまで日本代表のチームは、夏休みに、日本にいたことがない。せっかく少年たちが、お父さんやお兄さんに連れられてサッカーを見にいくことができるときに、日本ではいいサッカーの試合がない。これは非常に残念だと思うのです。夏休みのはじめか終りに、国立競技場でナイターをやれば、少年たちにとって、どれほどためになるか分からない。ところが、先日発表になったスケジュールを見ると、日本代表チームは、8月のムルデカ大会の前に、7月はアイルランドに遠征することになっている。ことしも貴重な夏休みに、少年たちにチャンスを与えられないのは、とても残念です。協会は代表チームの強化だけでなく、底辺のそういう方面にも、総合的に考えをめぐらせてほしいのです。

竹腰 アイルランド遠征は、まだ交渉中で、決まったわけではありません。向こうから誘いがあり、ワールドカップ予選の準備にもなるというので検討しているわけです。しかし外国から強いチームがきて日本でやるのでも強化のためになるし、夏休みの少年たちに良い刺激を与えることは確かですから、考慮してみましょう。ただ、たまたま、その時期に日本に来てくれるチームがあるかどうかは、非常にむつかしい。しかし、それも検討してみましょう。
 底辺拡大のことは、決して忘れているわけではありません。ことに少年たちのサッカーを、正しく育て、普及していくことはコーチ制度の確立とともに、協会の最重点目標です。このふたつのための企画も、ことしの協会事業計画に織り込まれています。

―― それから、サッカー場の建設ですね。東京の赤羽にできるという国立サッカー場は、1万5千人では小さすぎるのではないかという声がありますが……。

竹腰 国立サッカー場の正式決定は5月になりそうです。われわれは4万人を主張したのですけれども、国有地を国が出資して、サッカー場を作るので、あまり主張に固執すると、サッカー場そのものができなくなるおそれがあった。多くの観衆を入れる試合は、これまで通り、千駄ヶ谷の国立競技場でやればよいという意見もあるし、また赤羽のものも、将来拡張の余地がないわけではない。とにかくサッカー場がないんだから、ひとつでも実現させたいということですね。
 それから、今後は市民のためのサッカー場をたくさん作ること、あるいは地方都市の陸上競技場をサッカーでも使えるようにすることを、考えていかなければなりません。

―― ぜひ、がんばって<ださい。協会は日本代表チームの強化にばかり、お金や頭を使って底辺の拡充やグラウンド問題などは口先きばかりだという声も強いのです。それから最初のプロの問題にもどりますけれども、ミュンヘン・オリンピックが当面の目標だということであれば、少なくとも今後3年以内に、日本でプロ選手を認めることは……。

竹腰 あり得ないということになりますね。

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