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読者にかわって対談
夏休みに全日本の試合を! (1/2)
(サッカーマガジン1969年4月号)

本誌には毎日たくさんの読者から、ご意見や質問が寄せられてくる。それらの読者のかわり、おなじみの牛木さんをわずらわせて日本蹴球協会の竹腰理事長にきいてみた。

語る人/日本蹴球協会理事長 竹腰重丸氏
聞く人/牛木素吉郎氏


協会は自分たちのもの

 世界のサッカーは、プロもアマチュアもみなFIFA (国際サッカー連盟) の仲間にはいって、おたがいに試合をして、友情を深め、技術を伸ばすことになっている。
 日本では、日本蹴球協会がFIFAに加盟している。日本のサッカー・チームは、みな協会にはいって、仲間になってサッカーを楽しみ、ワザをきそい合うのが、ほんとうの姿だ。協会は全国のサッカー・チーム、そしてチームに属しているサッカー・マンが集まって作っているものなのだ。
 だから、日本のサッカーが思うように発展しないからといって、外から協会の悪口をいっているのは間違っている。協会は自分たちのものなのだから、意見があれば、どんどん出して協会をあずかっている役員の人たちに、やってもらうようにしなければウソだ。そして協会のやろうとしている仕事に (それがよいことであれば) みんなが力を出し合って協力しなければならない。
 協会の役員のほうも、自分たちのやろうとしていることを、積極的に国民に知らせ、協力してくれるように、たのまなければならない。
 というわけで、サッカーマガジンの関谷編集長といっしょに、日本蹴球協会の責任者、竹腰理事長にインタビューすることになったので、ぼくは大いに張り切った。
 実をいうと、竹腰理事長 (みんなノコさんと呼んでいる) は、ぼくの学校の大先輩で、ぼくが学生のとき、ヨチヨチとボールをけっていたのを知られているから、ふだんは頭があがらない。
 しかし、きょうはサッカーマガジン数十万の読者を代表して質問するので、胸を張って、果敢なタックルを試みた。  (牛木素吉郎)


アマの模範になるプロ

―― 4月からサッカー界も新しい年度にはいりますから、1969年度の協会の抱負をきこうというわけですけれども、国際試合のスケジュール事業計画はすでに発表されていますし、サッカーマガジンでも紹介されましたから、きょうはすこし話を広げて、5年先、10年先のビジョンを語っていただきたいと思います。

竹腰 わたしはホラが吹けないほうだからね。注文通りの話になるかどうか……。

―― ホラは困りますけれども、ホラに近いようなでっかい夢は持ちたいものです。5年後、10年後ということになると、日本にもプロサッカーができているのではないか。ところが日本蹴球協会は、プロ問題に対して、少し消極的すぎるのではないかという意見がありますが……。

竹腰 そんなことはない。協会内にも、積極論も消極論もありますよ。ご承知のように、ヨーロッパや南米のサッカーの盛んな国には、どの国にもたいていプロの選手がいます。だから日本もサッカーが盛んになるにつれて、プロが出てくるのは自然の成り行きだという意見は、当然でしょうね。  
 10年後にプロが出てきているかどうかは、いまのところ分からない。徴妙なところでしょう。ただ、大切なことは、どのような形のプロが出てくるかについて、協会は、そのタイミングとともに、プロのあり方を十分に考え、規制しなければならないということです。

―― だいぶむつかしい話になってきました。具体的には、どういうことでしょうか。

竹腰 第一にサッカーのプロは、単なる見せ物とは違うということです。もちろん試合をして、それを見てもらうのが、プロスポーツの仕事ですけれども、おもしろくするために八百長をしたり、珍奇なルールを作ったり、ふざけたプレーや、あるいはわざと血なまぐさい試合をしてみせて、お客さんを喜ばせたりするようなことは、サッカーではさせません。いまアマチュアとしてやっているサッカーと同じルールでさらに高度な技術と、すぐれた試合ぶりを見せ、人間の心をゆさぶる興奮とスリルを味わわせ、アマチュア選手の模範になるようなものではなくてはならない。

―― サッカーの場合は、プロができても、アマチュアと同じように、日本蹴球協会に加盟するわけですね。

竹腰 その通りです。協会とは別にプロサッカーを作っても、外国へ行って試合をすることができません。FIFA (国際サッカー連盟) の規定では、選手をアマチュア、ノン・アマチュア、プロフェッショナルの3種類に分けていますが、3種類の選手を全部、協会が統制するわけです。これは、プロとアマが別々になっている日本の野球や、ボクシングと違うところだし、プロを認めない陸上などとも、まったく違う点です。


協会がプロを統制する

―― プロはきたないなんて考えは、ぜんぜんない……。

竹腰 そんなことは絶対にない。プロを協会で統制して、アマの模範になるような、立派なものにしようという考えなんだから ――。スポーツの世界でプロとアマの問題は、むかしからあって、陸上競技では、プロは自分たちの仲間から締め出して、アマだけの世界を守ろうとしたし、サッカーはプロも仲間に入れて統制することによって、自分たちのスポーツを正しく発展させてきたわけです。

―― ふたつの別々のやり方ということで、どちらが正しく、どちらが間違っているというわけではないのですね。

竹腰 そうです。ただし現在の日本ではサッカーも、アマチュアだけで、プロ選手の登録はないし、認めていませんよ。蹴球協会は、日本体育協会に加盟していて、国際的にはFIFAの規定に従う一方、国内的には体協のアマチュア規定を尊重している。いまの体協アマチュア規定は相当にきびしいものです。
 サッカーとしては、将来プロ選手が日本に生まれてきたときには、これを加盟させて、協会が統制しなくてはならないと覚悟を決めているけれども、現行の体協アマ規定を尊重する以上、安易な気持ちで、いますぐに日本にプロ・サッカーを作れということはできないでしょう。

―― しかし体協のアマチュア規定は、根本的に改正されるのでしょう。竹腰理事長も体協のアマチュア委員として、関係しておられるわけですが……。

竹腰 さきほどいったように、プロとアマチュアの関係に対する考え方は、スポーツによって非常に違うので、これを体協の一般的な規定でしばると、矛盾だらけになってくる。そこで、体協の規定は、体協が主催する国民体育大会などの参加者の資格を決めるものにしようということで、改正を検討しているわけです、ただし、そうなった場合でも、サッカーのアマチュア選手は、FIFAのアマチュア規定を守らなければならないし、またほとんど全部のみなさんは、国体やその予選の県体や、高校総合体育大会に出場されるわけだから、体協の規定も守らなければならない。そうむちゃくちゃに、試合に出て、何万円もらってもいい、というようなことにはなりません。
 ただ将来プロ選手が出てきたときに、これを管理統制するのは、日本蹴球協会のFIFAに対する義務だから、体協の規定でそれができないようでは困る。そういう矛盾はなくしていかなければならない。しかし、規定でそうなったにしても、日本でいつからプロ選手を認めるかということは、蹴球協会が独自に判断して、慎重を期さなければならないと思っています。

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