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日本代表4つの問題点 (2/3)
(サッカーマガジン1967年7月号) 


病気がみんなでた日本

 極端ないい方をすれば、日英サッカーの三つの試合は、日本代表チームの弱点の展示会だったと思う。自信をつけることにはならなかったが、病気の早期発見に役立ったのは、幸いだったと思う。
 日本の欠点として「フィニッシュのまずさ」がよくいわれる。
 中盤のみごとな組み立てから左のウイングにタイミングのいいパスが出る。黄金の足がきらめき、杉山が相手のバックスを引きはなして突進、ゴールラインいっぱいから絶好球がゴール前に送られる。
 だが、次に聞こえるのは、耳をつんざくような歓声と拍手ではなくて、「あーあ」というスタンドの巨大なため息だった。
 フィニッシュ ― つまりゴール前の決め手の甘さに、歯噛みするような場面が、いやになるほど見られた。
 しかし、日本代表の弱点は、ゴール前だけではない。むしろ守備のほうが問題が多いくらいだ。
「そんなことなら、昨年12月のアジア大会のときからわかっていた」
 という意見があるかも知れない。
 ただ、今度は、日本国内の合計7万5千の観衆の前で (テレビの視聴者を加えれば数百万の国民の前で)病気を摘発したことに意味がある。
 守りのもろさ、ツメの甘さをもう少し分析してみると、つぎのように四つの問題点になると思う。
 

確認された日本の病気

◇ゴールキーパーの弱さ 3試合で、日本が奪われた6点のうち少なくても4点は横山のミスがからんでいた。前へ飛び出すタイミングを誤ったもの、高いシュートがすっぽ抜けたものなど。
 今回の横山は、どこか、からだの調子が悪かったらしい。日英サッカーの前にあった日本リーグ日立−三菱のときにも、高いタマを取りそこなった場面があったが、三菱の人の話では、前の日までカゼをひいて、フラフラしていたのだそうだ。
 日英サッカーには、浜崎(八幡製鉄)が負傷で参加できなかったこともあり、横山君が不調を押しての連戦になったのかも知れない。
 だから横山君個人を責めるつもりはさらさらないが、日本のゴールキーパーの判断力が悪いことは、前から指摘されていたことである。その上横山に続く若手がまだ伸びてきていないことも不安になってきた。
 経験が非常にものをいうポジションなんだから、これから海外遠征に、思い切って若手をひとりつれていったらいいと思う。
◇ストッパーのいないこと 第2戦のあとで長沼監督に「ヨーロッパのやつに勝ったってことは、とにかく画期的なことだね」とおせじをいったら「強力なストッパーがほしいな。どんな攻撃でもパシッ、パシッとはね返すやつ」と答えて、おせじを受け付けなかった。勝つには勝ったが、決勝点は相手の自殺ゴール。監督も選手も手ばなしで喜ぶ心境ではなかったに違いない。
 日本は3試合とも、先取点をあげながら、追いつかれている。現代のサッカーは、守備がすべての戦術の基礎になっているのだから先取点を守り切れないのは、致命的な欠陥である。1点のリードに追いつかれるのは、リードされているときに、2点の追加点を奪われるのよりも罪が深いと思う。
 今回は片山(三菱)を負傷で欠くハンディがあったが、それにしても、パンチの強さと柔らかさを兼ね備えたストッパーが欲しいと思った。このポジションも、ゴールキーパーと同様に、若手が続いていない。
◇八重樫を欠いたときの中盤 ハーフは森、小城、宮本輝など人材豊富なのだけど、今回のように八重樫が負傷で休むと、中盤の構成力ががた落ちになり、彼の存在の大きさを思い知らされる。「八重樫を欠いたときのチーム作り」は、昨年から未だ解決されていない宿題である。
◇ゴールの決め手 この点は新聞などでも、さんざん取りあげられた。ただ、決め手とは必ずしも “強シュート” のことではない。チョロで入れても1点は1点である。ゴール前のせまいところで、ボールを受ける前にわずかでも相手をはずす動き、機敏さ、気持ちの余裕がないと、国際試合ではチョロも打てない。相手を目前において、空高くシュートを打ちあげる結果になる。長沼監督が選手たちに「宇宙開発はやめようじゃないか」といっていた。
 以上が日英サッカーで確認された日本代表チームの病気である。9月のメキシコ予選までに、この病気を治すのが長沼監督、岡野コーチの役目だ。投書した無名氏にお願いする。あと3ヶ月、彼らの仕事ぶりを見守って下さい。

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