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◆ビバ!スポーツ時評

サッカー日誌 2007

◆高木琢也監督、孫子の兵法◆
 横浜FC 1−0 横浜F・マリノス
 (J1第2節、3月10日・横浜三ツ沢球技場)

 
★裏をかいた立ち上がりの攻勢
 J1に昇格したばかりの横浜FCが、初の「横浜ダービー」を制した。勝因は高木琢也監督の作戦と用兵の的中である。
 開始後7分に横浜FCが1点をあげた。山口素弘 ― 小村徳男とパスが回り、ゴールキーパーが飛び出してもつれたところで早川知伸が決めた。ボランチからのパスを、前線に進出していたディフェンダー・コンビで決めたゴールである。
 「守りを固めて来るだろうと思っていたら、立ち上がりに攻めに出てきた。それで守備があわてた」とマリノスの早野監督は悔しそうだった。
 開幕戦では、優勝候補筆頭の浦和に対して、徹底的に守りを固め逆襲を狙った。持ち駒を見ると久保竜彦をワントップに立てるほかはない。戦力差から見ても、守りを固めるしかない。だから、マリノスに対しても、守備固め逆襲狙いで来るだろう、と思ったら、その裏をかいて、いきなり攻勢に出てきた、というわけである。
 
★ダービーの雰囲気を利用 
 得点機を作った2人は、山口がフリューゲルスで、小村がマリノスで、それぞれ「横浜ダービー」を経験したことのある選手である。「ダービーに燃える」気持ちを知っている。それを生かそうと積極策を指示した高木監督の狙いどおりにベテラン選手が動いた。
 横浜FCは、開幕戦では浦和に1対2で惜敗している。
 そのときのメンバーと違っていたのは攻撃的両翼である。
 高木監督の話では、左の三浦カズの起用は「横浜ダービーに張り切っていたし、この雰囲気のなかでファンの期待にこたえるためにも」ということだった。右に元気のいい内田智也を使ったのは「マリノスの左ディフェンダーは若い、というスカウトからの情報」だったから、若さで対抗できる選手をあてたという。
 「敵を知り、味方を知れば、百戦危うからず」。
 高木監督は古代中国の兵法書「孫子」を愛読しているという。本当かもしれない。
 
★後半は守備固めの用兵
 前半のシュート数はマリノス5、FC4。ほぼ互角である。
 後半8分にはカズに代えて滝沢邦彦を入れ、27分には山口に代えて難波宏明を入れた。40歳に近いベテランの疲労を考え、守りを固めるための交代である。滝沢は中盤左で下がり気味。難波を右サイドに入れて守備の得意な内田智也をボランチに下げた。
 ワン・トップに久保、トップ下に奥大介を置く。逆襲の構えを見せながら、引き気味の4:4:2の守備的布陣に変えて、マリノスの手を変え品を変えの総攻撃をしのいだ。
 後半のシュート数はマリノスが11、横浜FCはたった1。一方的に攻められたが、虎の子の1点を守りきった。
 計画どおりの、しかし状況に応じた作戦と用兵である。
 高木監督は、シャイな笑顔で記者会見をしていたが、内には、したたかな計算を秘めている。監督として、将来有望である。

 

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