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◆ビバ!スポーツ時評

サッカー日誌  2006年8月10日(木)

◆三都主がのびのびとプレー◆
 日本 2−0 トリニダード・トバゴ
(8月9日、国立競技場)


★三都主がのびのび
 オシム・ジャパンの第1戦で試合がはじまったとたんに気付いたことがある。それは、三都主アレサンドロが、のびのびとプレーしていることである。最初から、積極的に動き回り、自由に攻めに出て、パスも出した。
 フィールドプレーヤーのなかでは最年長の29歳、代表での出場試合数も76試合目と断然多い。しかも、仲間の浦和勢が主軸である。遠慮なくリーダーシップをとることができる。だから、張り切って、のびのびとプレーしたのではないかと想像した。
 もちろん、与えられたポジションが大きな要因ではある。この日は、中盤の前のほうで、主として攻めに出る役割だった。
 ジーコ監督のときは,左サイドで使われていたから、守りの負担が大きかった。守りのときは、相手に応じて動かなければならないから、自主性は制約される。攻めは自分の考えでプレーすることができる。
 
★試合の流れを読んだプレー 
 2得点は、ともに三都主があげた。前半17分には、ゴール正面約23bのフリーキックをカーブをかけて左上隅ぎりぎりに決めた。22分の2点目は、左後方から駒野友一が.ゴール前のスペースに落としたのに走り出て、飛び出してくるゴールキーパーの頭越しに浮かして入れた。どちらもブラジル育ちの三都主らしい足技を生かしたものだった。
 後半には動きがにぶり、得点チャンスはなかった。しかし、佐藤寿人が後半21分に交替出場すると、左タッチラインぎわに出ている佐藤に、後方から長いパスを送って、新登場の戦力を生かそうとした。そういう試合の流れを読んだプレーもよかった。
 三都主は、残り4分(後半41分)に交代して退場した。ベンチに戻った三都主を、オシム監督はベンチに座ったまま握手した。この場面の写真は新聞に出ていた。殊勲者を立って出迎えなかったところが、おもしろい。
 
★三都主だけがヒーローじゃない
 試合後の記者会見で「三都主は、あのポジション(中盤の前のほう)に適性があると見抜いたのか」という趣旨の質問が出た。
 オシム監督は「彼だけがヒーローではない」と、答えにならない発言をした。
 「英雄とは墓の中に入ってからつけられる呼称だ。三都主はまだ生きている」
 通訳を通じての話なので、オシム監督が、なぜ質問への答えを避けて、見当違いのジョークでかわしたのか、その真意は分からない。しかし思うに、チームとしてまとめていこうとしているときに、特定の選手をマスコミがヒーロー扱いにするのを避けたかったのではないか。
 もちろん、三都主だけがよかったわけではない。ぼくの印象に残ったのは田中達也。前線から下がってきた位置で、相手の意表をついたワンタッチの短いパスを出していたのに感心した。 

 

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