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◆ビバ!スポーツ時評

ビバ!サッカー観戦日誌(2006/5/25up)

日本代表 0-0(0-0) スコットランド 
5月13日(土) 雨 埼玉スタジアム(午後7時20分〜) キリンカップ最終日

なぜ、点がはいらないか? 

☆2試合で35シュート1点
 キリンカップの最終戦は、スコットランドを相手に0対0の引き分けだった。スコットランドはシュート8本、日本は15本。日本のほうが優勢に攻めているのにゴールを割れない。キリンカップ2試合で日本は35本のシュートを放って1点だけ。「決定力がない」というお決まりの批判が渦巻いた。
 ジーコ監督は「35回もチャンスを作り出している」と前向きに評価をしながらも「最後に一つのタメ、駆け引きの余裕がない。まだ直せる余地はある。信じてやるしかない。貯まっているものが一気に爆発することを期待したい」と話した。
 この日のフォワードは久保竜彦と玉田圭司の先発。久保は後半17分に巻誠一郎と交代するまでにシュート2本。玉田は1本。巻は0だった。しかし、必ずしもフォワードがゴールをあげなくてもいい。この日、中盤の小笠原満男は、しばしばゴール前へ進出してシュート5本。攻めの形は作り出していた。

☆ストライカーの要件
 攻めの形を作り出しても点はなかなか入らない。相手も一生懸命守っているうえにゴールキーパーがいるからである。それを崩すためには、ストライカーに特別の資質がいる。ジーコ監督は、そのことについて「得点感覚はもって生まれるものだときいたことがある」と話した。
 サッカー選手に必要なものは、技術(テクニック)、知力(インテリジェンス)、体力 (フィジカル・フィットネス)である。ストライカーは、技術では枠内をねらうための正確なキック力、知力ではチャンスと場所を本能的に見分ける判断力、体力では相手の守りの密集地帯ですばやく動ける瞬発力が、とくに要求される。
 「得点感覚」は主として知力(インテリジェンス)の問題だろう。シュートできるスペースとタイミングを瞬間的に嗅ぎ分けて入り込み、味方からのパスを呼び込む。そういうストライカーを「鼻がきく」という。技術、知力、体力に共通してストライカーにとくに必要なのは「すばやさ」だが、知力のすばやさの必要性は、見過ごされがちである。

☆放りこみでは入らない!
 スコットランドは立ち上がりボールをゴール前に高くあげ、なだれこんで攻めた。背の高い選手が揃っているのでヘディングで脅かそうという狙いである。ゴールキーパーを突き飛ばさんばかりの激しい攻めだった。しかし、こういう「放り込み」ばかりでは、なかなかゴールは生まれない。シュートもそうそうはできない。ゴール前では自由にヘディングさせてもらえないし、手の使えるゴールキーパーが高いボールはとるからである。
 日本の4人の守備ラインは、このスコットランドの攻めをよくしのいでいた。しだいにパスをつないで中盤を支配するようになった。スコットランドは押し込まれて守備的になった。ゴールが生まれないのは「課題」であるが、スコットランドを相手に互角以上の戦いをするのを見ると「日本のサッカーも進歩したものだ」と思う。

[試合のメモ]
(キリンカップ第2戦、 日本 0ー0 スコットランド)

@W杯代表23人の決定
 キリンカップが終わった2日後の5月15日に、ドイツ・ワールドカップへ行く日本代表23人が発表された。ほぼ想定どおりだったが、ストライカーの久保竜彦がはずされて若手の巻誠一郎が入ったのに記者会見場でどよめきが起きた。
 しかし、最近のプレーぶりからみれば、久保ははずされて当然である。ゴール前での競り合いに元気がない。足のけがの再発を恐れているのかもしれないが、こういうプレーを続けていて、本番になれば本気でやることは期待できない。

A久保を断念した時期は?
 ジーコ監督は、キリンカップの前から「自分のなかでは、23人はほぼ決まっている」と言っていた。だから、久保をはずすことも前から決めていたのだろうと思う。でも、そうであれば、なぜ、このスコットランド戦で久保を先発に使ったのだろうか?
 久保と巻に関しては最後まで決めかねていて、スコットランド戦での久保の動きが、あまりにも悪いので最後に決断したのだとみる人もいる。しかし、ジーコ監督の口ぶりからは、そうはとれなかった。ファンやジャーナリズムの間で久保への期待が強いのを知りながら「23人はすでに決めている」といい、そのうえで、はずしたからである。結果としては「この状態では使えませんよ」とファンに納得してもらうためにスコットランド戦で使った形になった。そんなつもりではなかっただろうけれど、ジーコ監督が久保を断念した時期の真相を知りたい。

B日本選手はみなのびのびと
 久保以外の日本の選手は、みなのびのびとがんばった。ジーコ監督が「内容は満足できるものだったと思う。全員が走り、全員が作り出した」といったのは、必ずしも弁解ばかりではない。守備ラインは、役割分担がきっちりできて、バランスを崩さなかった。宮本恒靖が相手のハイクロスを、ヘディングでインターセプトしてクリアする場面もあった。
 中盤の小野は体調回復が順調なようで、きわだってさえていた。加地亮、福西崇史、遠藤保仁もよく動いた。玉田はシュートはあまりできなかったが、下がってドリブルしチャンスを作ろうとした。
 最後に10分ほど出た佐藤寿人もよかった。フランスにいる松井大輔とともに、ドイツへ連れていきたい選手だった。だが23人の枠内で、誰かを外して入れるのは調整が難しいだろう。

Cスコットランドの優勝
 スコットランドは、5月11日に神戸で行われた第2戦でブルガリアに5対1で勝っており、この日の引き分けてキリンカップ優勝ということになった。日本は第1戦でブルガリアに1対2で負けているので、この日、スコットランドに3点差をつけて勝たなければ優勝できない立ち場だった。とはいえ、ワールドカップを控えて、この大会の優勝は、ほとんど意識していなかっただろう。スコットランドが守備的になったのも、優勝を狙ったというよりも、2日前に1試合している強行日程がきびしかったからのようだ。

 

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