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◆フリーキック

【ブラジルサッカー通信<7>】
40年来の夢、マラカナンでサッカーを見る

<文・写真 手島直幸>


◆最高のサッカーを象徴する場所
 大学時代、合宿所でサッカーについての人生目標を語り合ったことがある。ロンドンのウェンブリーでサッカーを見たいというのが、当時としてはふつうの夢だったけれど、私はリオのコパカバーナでビーチサッカーをやって、世界最大のマラカナン・スタジアムでサッカーを見る、と言ったことを憶えている。
 世界最高のブラジルサッカーを象徴する2つの場所は、遠いあこがれだった。その夢を40年間、見続けてきた。

◆リオへ夜行バスの弾丸ツアー
 仕事で滞在中のサンパウロは、リオデジャネイロから500km離れている。 2014年のワールドカップに向けて新幹線計画があるが、いまは飛行機で1時間か、バスで6時間かの選択しかない。仕事が一段落したので、往復バスによる0泊3日の弾丸ツアーを計画、実行した。
 日系3世のコリンチアーノSin君を引きずりこんで、9月19日の深夜にサンパウロを出発、リオに向かった。
 朝6時に到着。コルコバードのキリスト像やポンデアスカールなどを見た。そしてコパカバーナ海岸へ行く。海抜800メートルのサンパウロから海抜ゼロのリオにくると、そこは常夏の熱帯で、思わず上着を脱ぐ。若いビキニ姿の海水浴客もたくさんいる。きめの細かな白い砂でビーチサッカーを見物しながら、4kmの砂浜を歩き通す。

◆フラメンゴのシャツを着て観戦へ
 試合はブラジル選手権(リーグ)第25節のフラメンゴ対コリチバ。
 露店でフラメンゴのユニフォームを20R$(1000円)で購入、さっそく着用した。サンパウロではコリンチャンス・ファンの私だが、リオではフラメンゴのファンとして行動することに違和感はない。同行のSin君はかたくなにコリンチアーノの操をまもる。ユニフォームを着ると通りすがりの人も親指を上に立てたり(今日も勝利だ!)、下に向けたり(フラミンゴなんてクソ食らえ!)反応するのがおもしろい。

◆効率悪い切符売り場
 マラカナン・サッカー・スタジアムに着いたのは午後5時30分。チケットを求める300メートルくらいの列の最後尾に並んだ。なかなか前に進まない。2階席券10R$(500円)、1階席券20R$とは安い。午後6時30分キックオフなのだが、チケットを手に入れたのは6時35分。売り場から離れている入り口まで走り、席に着いたときは、6時40分を過ぎていた。10分間試合を見損ねた。能率の悪いチケットの売り方に腹がたった。本業の経営コンサルタントとして、売り方改善の指導をしたくなった。

◆床が揺れる大熱狂
 かつては立ち見席で20万人収容と言われたスタジアムは、事故を契機に改修され、いまはすべて椅子席の9万5千人収容になっている。
 まだ空席がかなりあるなと思っていると、本日の入場者数5万人とアナウンスがあった。ここを満員にするのは大変だ。
 遅ればせながら、太鼓とトランペットなどで応援する席のそばに席をみつけた。フラメンゴがゴールすると全員立ち上がり飛び跳ねる。大声がハモって腹に響く。床が揺れているように感じた。見知らぬものも肩を組んでフランスデモのようにうねる。熱狂の嵐はやまない。
 周りは年金生活者のような老人や子供連れ、アベックなどの「一般の」ファンである。それがゴールを機に声をそろえ肩を組み応援歌を絶叫する同志集団に変わっていく。
 より過激な応援団は2階席にいて花火を打ち上げたりしているようだ。
 フラメンゴはアドリアーノの技ありシュートなどで3−0で勝った。うれしかった。しかし同時刻にコリンチャンスがゴイアスに1−4で敗れたというアナウンスに、Sin君と顔を見合わせた。複雑な思いであった。

◆2014年W杯で役立ちたい
 試合が終わった後、スタジアムを見て回った。FIFAの改善要求にそって改修すれば、2014年のワールドカップでは、決勝の会場として認められるだろう。終了後15分くらいで、観衆は滞りなく外に出ることができていた。
 ただ、チケットの売り方や試合運営などソフト的な点では改善の余地がある。この点では、日本が貢献できるのではないかと考えた。
 具体的には、日本人の私が経営コンサルタントとして、2014年のブラジル・ワールドカップ開催に役立てないものかと考えた。サッカーの技術はブラジルにかなわないけど、経営のことなら日本も勝てるかもしれない。

 帰りの夜行バスのなかで、新たな夢実現への道筋を考えた。
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