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◆フリーキック


日本プロサッカーの第一期を支えたオランダ人コーチ

フランツ・ファン・バルコム氏インタビュー  (2/2)             
(文・写真 中川桜、2004/9/20)


地元選手の育成こそがクラブを活性化する

−今、新潟がJ1で活躍していることをご存知ですか?

もちろん知っている。ヒロシに、新潟の実家から電話があるんだ。いつもどうだった?と聞いているんだよ。今、第2節が終わったところだよね?
新潟のことはいつも気にしているさ。自分が一から築き上げた2つのチーム、アルビレックス新潟と東京ヴェルディが日本の一番上のリーグで競い合っているなんて、すばらしいことだし、とても誇りに思っている。

−アルビレックス新潟は、昨年度の年間観客動員数が一番多いチームでした。一試合4万人。昨年はトップリーグでなかったにもかかわらず、です。そんなことは世界でも珍しいそうですが、どう思われますか?

新潟には他にプロスポーツがないし、東京のように近くに大きいクラブがないことなどが要因だと思う。新潟市外の人たちも、サッカーを観るために駆けつけているのではないかな?でも、人気があることにおぼれてはいけない。大事なのは、ホームの試合で負けないことだ。ホームで負け続けると、今はよくても、だんだんと観客は減っていくだろうからね」

−つまり目の前で負けなければいい、ということですか?

ははは、まあね。アウェイでもたくさん負けたらだめだけどね。まあ、最初の年は難しい、とは一般に言われることだ。でも今季、J1の中位くらいで終えられると予想している。きっとJ1には残れるだろう。
ところで、私の方から聞きたいんだが、アルビレックスには新潟出身の選手っているのかね? 2人だけ? それはよくないな。新潟イレブンの頃はほとんどが地元高校出身の選手だった。アルビレックスになってから、それが変わって、東京やその他から選手を集めるようになった。

−やはり地元選手がいいということですか?

熱く語るバルコム氏 自分は新潟でとても才能のある若い選手をたくさん見てきた。でも、高校を出ると、東京の大学に勉強をしに行ってしまった。できる限り、そのような新潟出身の若い選手を新潟にとどめるようにしないといけない。学校とサッカーは、新潟でも両立できるはずだし、そうしなくてはいけない。
クラブは、若いときから育ててトップに上がれるように育て上げないといけない。アヤックスのようにね。
アヤックスにはトップチームに育てた選手がいっぱい出ている。それがプロ・チームの仕事だよ。育ててトップに上げる、それが大事だ。
この先、アルビレックスの中に5人、6人の地元選手がプレイするようになれば、私はアルビレックスを本当のプロのチームとして認めるよ。

−地方都市新潟での生活はいかがでしたか?

私はイングランドにも行ったし、香港、イランにも行った。ベルギーでもオランダでも働いた。世界中の11カ国で仕事をした人間だよ。どこに行ったって平気さ。その中でも、新潟は住みやすかったよ。東京みたいに込み合ってないし、自然も多くて、リラックスできた。東京には前後2回、お世話になって合計4年、新潟にも4年いた。

−日本滞在で一番心に残ることは何だったでしょうか?

新潟はもちろん思い出深いところだ。でも、東京ではなんといっても、クラブチームで日本一になったからね。どちらが一番というよりも、両方心に残っているね。
新潟でも、本当はもっと長く残って、アルビレックスを育て上げたかった。でも、途中でチームを去らねばならなかったのは、とても残念なことだった。
JFLからJ2にあがって、J1に上り詰めたかったから、それが叶わないとわかったとき、とても傷ついた。
私は今も、もう一度日本で仕事がしたいと願っている。どこのチームでも、学校でも構わないよ。

−さいごに、バルコムさんから新潟サポーターへ、メッセージをください。

新潟にはすばらしいサポーターがいるということを、私も知っている。アルビレックスはJ1にあがるまでに10年かかった。だが、さらにいいチームになるには、少なくともあと5年必要だろう。5年後にはこのチームはJ1で優勝を争えるチームになれると思う。たとえ今年、チームがうまくいかなくても、チームを信じて支え続けてやってほしい。アルビレックスが日本でとてもいいクラブになることを信じている。が、それには時間が必要だ。それを信じて、ずっと支え続けてください。


<後記>
 林雅人さん車で私を案内して、通訳もしてくださった、日体大OBの林雅人さん(写真)は、現在、フィテッセの育成部門でアシスタントコーチをしながら、オランダサッカー協会公認1級取得(2級はすでに取得)を目指している。
 林さんと安藤(ヒロシ)さんというふたりの日本人と、遠いオランダの町で出会いの機会を持てるのもサッカーの縁。
 いかつい顔をした2匹の犬がほえるバルコム邸の居間は、小公子に出てくるような立派さ。ごつい革張りの椅子に座ってながめる壁にはアジア風の飾り物。世界を股にかけるオランダ人の心意気が読み取れる。
 門まで送ってくれたバルコム氏は、「また日本で仕事をしたい。今度は若い人たちを育てたい」と真顔で言った。

 どこか、バルコムさんを必要としている学校やクラブはありませんか?


<筆者紹介>
中川 桜
ビバ!サッカー講座第1期からの講座生。以来4年、競技としてのサッカーだけでなく、世界のサッカー文化全般に興味の対象を広げている。

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