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サッカーマガジン 2004年12月7日号
ビバ!サッカー

新潟県中越地震とJリーグ

 新潟県中越地震のために、アルビレックス新潟と柏レイソルの試合が延期になった。その試合は11月10日の水曜日に東京の国立競技場で行なわれた。
 「おかしなことをする」と、ぼくは思った。本来ならホームの新潟の競技場、ビッグスワンで行なう試合である。それを敵地に近い競技場でやるとは何ごとか。
 交通網が震災で寸断されている中で、上京するのはチームもサポーターもたいへんである。勝負のうえでも不利は免れない。新潟でやれば、4万人近い観客を集めることができたかもしれない。だから経済的にも大損害である。
 新潟からは「競技場は大丈夫」という連絡があったとのことだった。上越新幹線が止まっているので、柏のチームが新潟にくるのはたいへんだが、それは新潟から東京に往復するのでも同じである。
 今回の中越地震は、大きな余震が続いたのが特徴だった。だから引き続いて地震が起きるのを恐れたのかと思った。しかし、長岡、十日町など今回の被災地の中越地方と新潟市は離れている。地震地域としては、それほど影響はないはずである。
 地震から3週間あまりたってから、仕事があって新潟市へ行った。新幹線は止まったままだったが、飛行機の臨時便の席を運よくとることができた。
 新潟空港に着いたら、自衛隊の輸送機が駐まっている。迷彩を施した大型機を見てちょっと緊迫した気持ちになり「新潟で試合をするのは無理だったのかな」と考えが変わりかけた。
 地元の人に聞くと、地震の起きた10月23日は新潟市でもかなり揺れたという。東京でも、なんども大きな揺れを感じたほどだから、それはそうだろう。でも、その後の余震は、それほどではなかったという。
 「新潟市を地震が襲う可能性は小さいにしても、市民の気持ちには不安がありますね。それに救援活動に追われている県などの自治体としては、余計なことはやめてくれ、というところでしょう」と地元の人の話だった。
 ビッグスワンは、びくともしないで立っていた。だが「周辺の広い駐車場は自衛隊の救援基地になって、テントなどが立ち並んでいますよ」という。
 「なるほど、これか」と思った。
 「以後の試合は新潟で予定どおりやります」とJリーグから報せてきた。そのなかに「新潟県、新潟市、自衛隊、アルビレックス新潟と協議した結果…」と書いてあった。なんで自衛隊と協議するのかと不審に思っていたが、納得がいった。東京での開催は、止むを得なかったのかなと、いまでは思っている。


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