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サッカーマガジン 2005年12月27日号
ビバ!サッカー

ガンバ大阪の優勝とメディア

 ガンバ大阪のJリーグ優勝が決まったのは土曜日の12月3日。その翌日の日曜日に東京駅でスポーツ新聞を買い込んで新幹線に乗った。そして新大阪駅で降りてまた同じスポーツ新聞を買い込んだ。東京と大阪で記事の扱いがどう違うか比べてみようと思ったからである。東京に自宅があって関西の大学で講義を持っている。毎週末に東京に帰って日曜日に関西に戻る。日曜日には夕刊がないから夕方に大阪に着いても新聞スタンドにまだ朝刊が残っている。それで、こういうことができるのである。
 東京版も大阪版も記事は同じである。しかし見出しには違いがあった。代表的だったのはサンケイ・スポーツである。
 1面には、スタンドのサポーターを背景にイレブンがトロフィーを掲げて歓喜している写真が大きく載っている。東西同じ写真である。見出しは違う。大阪版ではトップは「13年目の悲願、ガンバ優勝」と大きな縦見出しである。東京版はその場所に「宮本泣いた」とあって、左上に「あと1秒の奇跡、ガンバ初V」が横見出し。字はやや小さい。
 「なるほどな」と思った。
 今回のガンバ優勝には三つのポイントがあった。第一は関西チームのJ1初優勝、第二は5チームが争った空前の大混戦、第三は首位に立っていたセレッソ大阪が地元で最後の1秒に同点にされた長居の悲劇である。
 関西版としては、地元ガンバの優勝がニュースバリューの第一だ。そこで「13年目の悲願…」が主見出しになる。スポーツとメディアの地域性である。
 東京版では、そうはいかない。大混戦の空前の競り合いも、相手も大阪のチームとあっては、関東の読者の興味を引くには「いま一つ」である。
 そこで「宮本泣いた」が主見出しになった。宮本恒靖は2002年ワールドカップのとき鼻骨骨折しながら顔にマスクをして頑張った。その後も日本代表の守りの要としてブラウン管への露出度は高い。人気は全国区である。だから東京版ではお茶の間のスターを主見出しにしたわけである。
 Jリーグは地域に根ざしたスポーツを掲げている。しかし衛星放送とインターネットの時代になって、情報は地域の境界を越えて飛びかう。地域性と広域性の両立が課題である。マスメディアも事情は似ている。
 「これからは、地域のサポートとボーダレス時代に通用する人間的なスターの両立が必要なんだ」と思った。
 横綱朝青龍の土俵を、モンゴルの人びとが衛星テレビを通じて応援している時代なのだから。


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