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サッカーマガジン 2002年6月29日号
ビバ!サッカー ワールドカップ・スペシャル

フランスはなぜ敗退したか?
第1ラウンドの波乱を振り返る

 ワールドカップ序盤戦の大きな話題は、フランスとアルゼンチンの第1ラウンド敗退だった。欧州と南米の優勝最有力候補が、なぜはやばやと姿を消したのだろうか。その結果、第2ラウンドの見通しはどうなるのだろうか。この点を中心にして第1ラウンドを総括してみよう。

日本の土も踏まずに
 5月31日、ソウルの開幕試合でフランスはセネガルに0−1で敗れた。翌日、ぼくは無理をしてソウルから、新潟に飛び、日本での開幕試合を見た。そのとき新潟のサッカーの友人が「フランスがA組1位になって新潟に来るのを楽しみにしていたのにダメになりそうだ」とがっかりしていた。ぼくは「優勝候補が第1ラウンドでとりこぼすのは、よくある例だよ。最終的にはA組1位で新潟に来るよ」と無責任な慰めを言っておいた。その時点では、フランスは不運で負け、セネガルはラッキーで勝ったのだと思っていたわけである。
 ところが、フランスは第2戦でウルグアイと0−0の引き分け、最終戦ではデンマークに0−2で敗れて、ついに1勝もできないまま6月12日にソウルのインチョン(仁川)空港から帰国してしまった。新潟で試合をするどころか、日本の土を踏むこともできなかった。日本のファンとして、また新潟の出身者として、まことに残念である。
 とはいえ、ぼくはフランスの敗退をまったく想定していなかったわけではない。大会前に取材計画をたてるとき、ある友人は「フランスはどうせ勝ち進んで日本に来るから、そのときに見ればいい。わざわざ韓国へ見に行くことはない」と言っていたが、ぼくは「優勝するにしろ、しないにしろ、フランスを見ておかないわけにはいかない」と思って、ソウルの開幕試合だけでなく6月6日にはプサン(釜山)にとんぼ返りで行ってウルグアイとの試合も見てきた。これは正解だったわけである。

いろいろな敗因
 「フランスがなぜ負けたか」については、すでにいろいろな意見が出ているし、これからも出るだろう。主なものを列挙してみよう。
@ジダンの不在
 チームのリーダーであるジダンが5月26日の韓国との親善試合で、左足を痛めた。そのために最初の2試合は出場できなかった。最終戦は2点差以上をつけて勝たなければ、第2ラウンドに進出できない立ち場だったので、無理をして出場したが間に合わなかった。
A過去の栄光への依存
 フランスは4年前のワールドカップで、あまりにも見事に優勝したために、また2年前の欧州選手権でも優勝したために、その当時のメンバーを主力に、この大会にも臨まなければならなかった。ファンも過去の優勝で有名になったスーパースターの出場を望んでいた。そのために若い新戦力を起用するのが難しく、メンバーの年齢が高くなった。
B過密な日程
 フランスの選手たちは、スペインやイタリアなど、欧州のいろいろな国のトップレベルのクラブでプレーしている。そのために各国のリーグや欧州のクラブ選手権のスケジュールにしばられていて日程が過密になり、疲れがたまっていた。
C予選なしの影響
 前回優勝国として予選なしで出場できた。そのために、欧州選手権以後の2年間は、代表チームとして強い相手との緊迫したプレッシャーのなかでの試合を経験できなかった。それがチームに緩みを生んだ。

イングランドが有力に
 フランスが、すばらしいチームであったことは間違いない。セネガルに敗れたときも、ウルグアイと引き分けたときも、一人ひとりの技術と判断力、数人のグループによる部分的なコンビネーションのひらめきは、一段上だった。しかし、ちょっと歯車が狂うと勝てない。ワールドカップの決勝大会に出場してくるほどのチームの力は、それくらい接近してきている。
 アルゼンチンの敗退にも、同じような事情がからんでいただろう。
 「死のグループ」といわれたF組だったから、ちょっとした歯車の狂いが明暗を分けたのは止むを得ない。イングランドに0−1で敗れた試合も、スウェーデンと1−1で引き分けた試合もテレビで見ただけだが、アルゼンチンがいいサッカーをしていたし、形勢としても優勢だったように見えた。第1ラウンドで姿を消したのは残念である。
 とはいえ、優勝候補をしのいで第2ラウンドに進出したのは、みな、それにふさわしいチームだろう。イングランドは、ベッカムとオーウェンが調子を上げ、エリクソン監督が優勝を目指して、うまくチームづくりをしているように見える。ひょっとすると1966年に次ぐ2度目の優勝のチャンスである。
 スペイン、ブラジルも有力になってきた。
 ところで、新潟の第2ラウンド1回戦はイングランド対デンマークになった。欧州対決の好カードである。フランスが来なくて落胆したぼくの友人は「これでいいや」と気を取り直したに違いない。


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