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サッカーマガジン 2001年5月23日号
ビバ!サッカー

卓球世界選手権の運営に学ぶ
W杯のボランティアを考える

 ゴールデン・ウイークに大阪で行なわれた卓球の世界選手権大会を見て2002年ワールドカップの運営を考えた。同じ世界選手権でもサッカーとは「おもむき」が違うが参考になる点もあるのではないか。とくにボランティアの活用は、かなり難しい問題のようだ。

雰囲気の違い
 ゴールデン・ウイークは、サッカーではなく、卓球を見て過ごした。4月29日から5月6日まで大阪で行われた第46回世界卓球選手権大会を視察、ではない、取材したのである。「なんで、卓球を」なんて言わないでもらいたい。
 サッカーだけに、こり固まらないほうがいい。他のスポーツから学ぶことも多いはずである。それに、ぼくは東京の新聞社でスポーツ記者だったときに卓球の世界選手権をなんども取材した経験があり縁が深いのである。
 ところで、同じ世界選手権でも、世界卓球とサッカーのワールドカップでは、雰囲気が非常に違う。
 サッカーのワールドカップは、選ばれたチームによる争いである。予選を経て32チームだけが参加する。したがって参加選手数は700人あまりである。雰囲気は、プロフェッショナルのドライな戦いという感じである。
 世界卓球は団体戦もあるが基本は個人の戦いである。そしてITTF(国際卓球連盟)に加盟しているすべての国と地域が参加できる。大阪大会には128カ国、1400人ちかい選手が参加した。規模は大きいが、世界の卓球人が一堂に集まった家族的なムードに包まれている。
 運営の違いは非常に大きい。サッカーは選ばれた少数が、全国に散らばって1カ月にわたって試合をするから運営は比較的楽である。卓球はレベル差の大きい多数が1カ所に集まって、2週間で7種目を争うから。運営は非常にたいへんである。

動員ボランティア
 世界卓球の大会運営がサッカーの2002年に役立つこともあるのではないかと期待して、世界卓球を見に出かけた。
 大阪の中心部から港のほうに向かう地下鉄に乗って朝潮橋でおりる。港のすぐそばの埋立地に、大きな体育館が二つと屋内水泳プールがある。そこが会場である。
 地下鉄の改札口を出たところに、「世界卓球」ののぼりを立てて、案内デスクが設けられていた。女性が3人いて、その日の試合予定のプリントを渡してくれた。
 「ボランティアですか?」と、きいてみた。
 「ええ、そうです」とひとりが答えた。もうひとりが口を添えた。
 「でも、私たちは大阪市の体育指導員で、その連盟を通して声をかけられたのです」
 なるほど、そうだろう。 
 育ち盛りのお子さんを持っていそうな年配の女性が、ゴールデン・ウイークに気軽にボランティアに応募するのは難しい。自治体がらみの組織で動員しなければ、人材をたくさん集めることはできないだろう。 
 ボランティアは、いろいろな場所で働いていた。そのほとんどが大阪市の関連の団体か組織に属していた。重要な部署には市役所の職員も配置されていた。事実上、連休返上の勤務なんだろう。 
 大会の記念プログラムには、ゴマ粒のような活字ではあるが「ボランティア協力者名簿」が掲載されていた。数えてみたら個人名では1728人だった。

自治体協力の功罪
 ボランティア名簿には地元の老人クラブ別のリストもあった。どの老人クラブも4人ずつ出している。人数を割り当てたのだろうか。
 こういうやりかただと、なかば強制になるという弊害もある。あるいは名前は出しても実際には来ない、あるいは来てもらっても役に立たない場合もある。
 また自治体主導に頼ると、スポーツ大会を運営する主役であるはずの競技団体の足腰が弱くなる心配がある。地道な仕事、面倒な仕事をお役所任せにするからである。
 こういうボランティアは、競技会場の外で仕事をするから、試合を見ることはできない。したがって、試合をみたい人は、ボランティアはしたがらない。そうなると、卓球協会が声をかけて仲間を呼び集めることは難しいかもしれない。やはり市役所が、日ごろつちかっている組織を通じて動員するしかないのだろう。 
 一つのスポーツ団体が世界選手権をやるときには、他のスポーツの人たちがボランティアとして協力することはできないのだろうか、と考えた。世界卓球にサッカーの人たちが協力し、ワールドカップのときには、卓球の人たちが協力するというようにである。
 2002年のワールドカップでもボランティア募集がはじまった。各地のサッカー協会は、自主性をもって大会運営の一翼をにない、自分たちの足腰を鍛えてほしい。そのうえで、サッカーだけでなく、できるだけ多くのスポーツの仲間のサポートを求めることはできないだろうか。


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