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サッカーマガジン 2000年6月21日号
ビバ!サッカー

ワールド杯開幕へ、あと2年
大事なことが決まっていない

 日韓共催のワールドカップまで、あと2年を切った。日本のスタジアム建設は順調に進んでいるようだが、運営面では、まだ方針の定まらないことがいろいろあって、各会場地の準備を担当している人びとは、いら立っている。「時間はないぞ!」と警告したい。

開幕日が変わる
 ワールドカップ2002まで、あと、ちょうど2年の6月1日に、新潟へ出かけた。新潟県開催準備委員会の総会が市内のホテルで開かれたので、出席するためである。新潟はぼくの出身地である。
 「あと、ちょうど2年といいますが、実は2年を切っているかもしれません」
 という人がいた。
 開幕日は6月1日ということになっているが、FIFA(国際サッカー連盟)は、1日繰りあげて5月31日にする予定である。そうなると6月1日では、すでにまる2年を切っていることになる。
 「いったん決めたことを、簡単に変えちゃうんですからねえ。サッカー界はヘンなところがありますねえ」
 と嘆いたのは、新潟県庁の担当者である。
 「一日繰りあがると、何か困ることがあるんですか」
 とたずねてみた。 
 「いや、それほど困るわけではありませんけどね。カウントダウンの看板の数字を一つ繰り上げなければならない」
 「ワールドカップまで、あと○日」という表示板が市内の3カ所にある。開幕日が変わると、この看板をコントロールしているプログラムを変えなくてはならない。
 そのこと自体は、たいした手間ではないだろうけれど、決めたことがくるくる変わるようでは、これから先が思いやられる。試合会場地として不安になるのは無理もない。

放映権の行方?
 決まったことが変わるだけではない。あと、2年を切ったのに、まだ決まっていないことが、たくさんある。それが日韓あわせて20の会場地を不安にしている。そのために自治体の協力体制がゆらぐのではないかと心配である。
 決まっていないことで、いちばん気になるのはテレビ放映権である。
 FIFAから権利を買ったヨーロッパの会社が、日本での放映に250億円の値段をつけてきた。
 日本側は、NHKと民放がグループを作って、一括して買うことにしているが、250億円では、とても引き合わない。フランス大会のときは9億円だった。なんぼなんでも、一挙に27倍以上とはひどい。というわけで、にらみ合いが続いていた。
 最近、ちょっと風向きが変ってきて、衛星放送CSのスカイパーフェクTV!が、全試合の放映権を買うという話が新聞に載った。「CSが全部やる」というわけである。
 察するところ、開幕試合、日本の出場する試合、決勝戦などの重要な試合は、NHKと主要民放の地上波も中継する。スカイパーフェクTV!は、それを含めて全試合を中継する。そういうあたりに落ち着くのではないか。それで放映権料の総額と分担がどうなるのか。そこが焦点になっているのだろうと想像した。
 「CSは有料だろ。サッカー普及のためにはよくないね」と友人が言った。
 しかし、NHKも受信料をとっている。有料だからいけないとは、いちがいには言えない。

サッカー広場
 CSテレビが、受信契約を増やすためにワールドカップを利用する。それも悪くないと思う。ワールドカップ後も、引き続いてCSのサッカー・チャンネルを視聴する人が多いだろう。長い目で見れば、サッカー振興の役に立つ。
 2002年には、主要な試合は、NHKと民放の地上波も放映するというのであれば、まず妥当な線ではないか。
 そういう線で解決した場合に、「サッカー広場での公開放送は、どうなるのだろうか」と考えた。
 2002年に、ほとんどの会場都市では、試合数は3〜4試合である。そこで、その都市の競技場で試合のない日には、スタジアムの大スクリーンに他会場の試合の映像を写して見てもらおう、という案が出ている。
 また、地元でも入場券を買えないファンが大勢出るだろうから、大きな公園などの広場にスクリーンを特設して、テレビ映像を見てもらう計画もある。
 それが無料だということになると、CSの受信契約をした人にとっては不公平である。試合ごとに視聴料を払うペイ・パー・ビューであれば、なおさらである。
 これは一つの例である。
 日韓合わせて20カ所の自治体や地方サッカー協会が、それぞれ計画をたてて準備をはじめているのだから、FIFAや中央の組織委員会が、早目早目に、決めるべきことを決めなければ、現場の仕事は進まない。
 あと2年――。
 「時間はないぞ」と叫びたい。


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