アーカイブス・ヘッダー

 

   
サッカーマガジン 1998年2月11日号
ビバ!サッカー

岡田全日本のスタート

 ワールドカップへ向けて、岡田武史監督の率いる日本代表チームがスタートした。1月16日に発表された代表選手29人は、実際には「候補」の段階だが、予選のときは前任者のチームを途中で引き継いだのだから、岡田監督の方針によるチーム作りがいま始まったと言っていい。

☆増田も、柳沢も!
 岡田監督の率いる日本代表チームは2月8日からオーストラリアでトレーニング・キャンプをする。
 1月16日に発表された日本代表チームは、この合宿に参加するメンバーである。
 したがって、フランス大会に行くメンバーとしては「候補」の段階だが、2月15日にアデレードでオーストラリア代表との国際試合が組まれているので「日本代表」として発表された。
 それはともあれ、このメンバーは、岡田監督が完全に自分の方針で選んだ顔触れである。これは「岡田丸」の本当の船出である。 
 乗組員のなかに新人が4人入った。そのなかに増田忠俊も、柳沢敦も入っていた。「よし、よし」とぼくは満足した。 
 なぜ満足したかというと、先だって、このビバ!サッカーで、天皇杯決勝の話を書いたとき、優勝したアントラーズの殊勲者として、この2人をとくに取り上げて、日本代表入りを期待していたからである。 
 中盤から前線へかけての働き者である増田は、もっと早くに代表に入れておくべきだったと思う。「くせのある」選手だということだが、個性の強いタレントを使いこなせないようでは、強いチームはできない。 
 ストライカーの柳沢は、20歳である。若い才能をなるべく早く、日本代表に加えたほうがいい。才能は経験によって鍛えられるものだからである。 
 19歳の中村俊輔が加わったのもいい。いま評判の中田英寿も21歳だ。若すぎるということはない。

☆岡田監督の発言
 岡田監督が「アルゼンチンに勝ちたい」と話していたのを読んだ。これはいい。しかし一方で「1次リーグの目標は1勝1引き分け1敗で」とも発言していた。こちらの方はよくない。引き分けや負けを前提にした話を大将がするものではない。
 「1勝1引き分け1敗」というと1敗の相手は優勝候補のアルゼンチンだと思われてしまう。しかし、負ける可能性は、クロアチアが相手でも、ジャマイカが相手でもある。一方でアルゼンチンに勝つ可能性だってある。アルゼンチンには勝てないと思っているような印象を与えるのはよくない。
 1勝1引き分け1敗でも決勝トーナメントに進出できる可能性があるのは、計算としては正しい。だから監督が、その可能性を頭のなかで想定することは必要である。だけど、それを口に出して言うことはない。口に出して言うのは、われわれジャーナリストに任せておけばいい。
 岡田監督は「アルゼンチンは、優勝をめざしてワールドカップに乗り込むので、第1戦ではコンディションはピークではないはずだ」と言っていた。だから日本が、どんとぶつかったとき、思わずしりもちをつく可能性はある。
 これは、前にぼくが、このビバ!サッカーに書いた話である。岡田監督は「新聞や雑誌の記事は、原則として読まない」と言っていたから、ぼくの記事を読んだわけではないだろうが、たまたま同じ考えであったとしたら、こっちのほうは「よし、よし」である。

☆準備態勢には不安も
 フランス大会までの日本代表のスケジュールは、あまり感心したものではない。
 2月はオーストラリアでトレーニング・キャンプをし、その間にオーストラリア代表などと3試合をする予定である。
 キャンプ地としては、オーストラリアは悪くない。南半球にあるので日本が寒いときには暖かいからである。雨が少ないのもいい。
 しかし、オーストラリアは、サッカーでは世界のトップクラスではない。強い相手との試合の経験を積むには不適当である。同じ南半球なら南米に行けばいいのにと思う。
 3月に日本でダイナスティ・カップがある。相手は韓国、中国、香港である。アジアでのお付き合いは重要だが、ワールドカップヘの準備としては「試合をしないよりはまし」という程度の経験にしかならないのではないか。
 4月1日にまた、韓国代表との試合があり、5月にはキリンカップがある。キリンカップの相手は、まだ決まっていない。また、その間にJリーグの試合がある。
 こういうように見ていくと、これからの4カ月間のスケジュールには不安がある。万全でないことは確かである。
 5月の下旬から海外に出てトレーニング・キャンプをする。結局、これが非常に大事な期間になるのではないか。
 強化委員会が、しっかりした支援体制を岡田監督のために作ってやってほしいと思う。


前の記事へ戻る
アーカイブス目次へ

コピーライツ